シチズンサイエンス講演録(2/2)~市民と科学者が"つながる"場~


今回はシンポジウムの後半に話題提供のあった「サイエンスカフェ@ふくおか」と「サイエンスパブ in 福岡」について紹介したいと思います。

“スピンアウト”を生み出し続けるサイエンスカフェ
九州大学の吉岡瑞樹先生からは既に60回以上の開催を数える「サイエンスカフェ@ふくおか」(以下「@ふくおか」)に関する話題提供がありました。「@ふくおか」開催のきっかけは、国際リニアコライダー(ILC)計画に関するアウトリーチでした※1。2013年にILC誘致の国内候補が北上山地に決まって以降は、趣旨を

九州大学をはじめ、県内の科学ソースを使い、多くの県民の方に科学への興味(知的好奇心)を持っていただくこと

とリニューアルして、現在までおおよそ月1回ペースで開催を続けています。現在の会場は渡辺通にある「BIZCOLI」の交流ラウンジです。
※1 元々、ILCの国内誘致先として、北上山地の他に、福岡・佐賀に位置する脊振山地も候補に上がっており、九州大学などが誘致活動を進めていました。

「@ふくおか」はゲスト講演(約60分)とラウンドテーブル形式の“雑談”から成ります。特に後半の“雑談”が、他の講演会にはない「@ふくおか」の特徴でしょう。

この“雑談”はサイエンスカフェの醍醐味と言っても良いと思います※2。講演を聴くだけでなく、研究者と“雑談”したい方は、ぜひお近くのサイエンスカフェを覗いてみて下さい。
※2 “雑談”と言っても、講演やゲストの研究に関するものが主です。気軽な雰囲気で、かつ、あまり大人数ではない質疑応答・意見交換と理解してもらった方が良いと思います。

ちなみに、次回の「@ふくおか」の案内は既に公開されています。ご興味のある方はチェックしてみて下さい。

さて、「@ふくおか」はそれ自体も魅力的なのですが、「@ふくおか」参加者が他の地域で新たなサイエンスカフェを始めている点でも注目に値します。吉岡先生はサイエンスカフェの“スピンアウト”と表現されていました。例えば、うきは市で開催されている「サイエンスカフェ@うきは」や唐津市で開催されている「サイエンスカフェ@唐津」はその好例です。

このようにサイエンスカフェが多くの地域に根付いていけば、シチズンサイエンスの“タネ”が育つ土台になるんだろうなぁ、と感じます※3
※3 僕は吉岡先生たちと共に、スピンアウト企画がなぜ続いているのかインタビュー調査をしています。他のスピンアウト企画の助けになるような資料となれば良いな、と考えています。

市民と学者の“ガチだが気軽な対話”が生んだもの
「サイエンスパブ in 福岡」(以下「in 福岡」)については、国立天文台の山岡均先生(元 九州大学)から紹介がありました。「in 福岡」は「パブ」と名が付いている通り、お酒を呑みながら宇宙や天文について、専門家も交えながら語り合うイベントです。会場は天神界隈の飲食店で、毎回違うお店を選んでいるそうです(そこもこだわりだとか)。

僕も一度参加したことがあるのですが、宇宙・天文ファンの参加者が多く、まさに“ガチだが気軽な対話”がお店中で繰り広げられていた印象が残っています。

「in 福岡」は、専門家による話題提供は特になく※4、(呑みながらの)対話のみの会です。話題に困ったとき用の題材として、最新版の「一家に1枚 宇宙図」※5が各テーブルに配置されることも「in 福岡」の特徴です。山岡先生の

参加者が何を知りたいか、を重視している

という言葉は印象的でした。
※4 参加者同士で飲み物を注いでいる開始後5分程度の時間で、山岡先生から最近トピックスに関する話題提供があります。
※5 一家に1枚|科学技術週間 のページから無料ダウンロードできます。宇宙に関する膨大な情報が詰め込まれています。

山岡先生のお話しの中では、「in 福岡」のつながりが生んだものが二つ紹介されました。一つは小惑星「王貞治」。もう一つは「国際会議での“おもてなし”」です。

「王貞治」は、新しく発見された小惑星に福岡にゆかりのある人物の名前を付けたい、と思った山岡先生たちのアイデアで生まれました。実現の過程では、福岡ソフトバンクホークスにつてがある「in 福岡」参加者にも尽力してもらったそうです。それがあったからこそ、本人の承諾も得られたそうです。以下は当時のニュース記事です。

ちなみに、2019年3月31日までの期間で、国際天文学連合設立100周年記念日本国内企画として、小惑星命名キャンペーン「星に名前を」が展開されています。興味のある方はウェブサイトをチェックしてみて下さい。

さて、二つ目に挙げた「国際会議での“おもてなし”」とは、2018年に福岡市科学館で開催された「世界天文コミュニケーション会議(CAP)」での各種イベント企画を指します。国際会議への参加者に向けて、「in 福岡」参加者有志が星空展望会やお茶会体験会を企画されたそうです。これらの“おもてなし”を含んだ2018年の国際会議には「日本政府観光局 国際会議誘致・開催貢献賞」が贈られました※6

まとめ
「@ふくおか」や「in 福岡」のようなイベントは、研究者と市民が出会う「場」として重要だと僕は考えます。そして、その出会いが一過性のものに留まらない先例を「@ふくおか」と「in 福岡」はつくってくれています。このような「場」が、中村征樹先生の言う「研究への直接的関与への土台」※7になれば、シチズンサイエンスもきっと広まっていくのだろうと思います。
※7 中村先生が基調講演の中で強調されたことです。前回ブログ中で紹介しました。

【補遺】
山岡先生は現在、国立天文台の広報室長を務められています。彼の広報活動に関する心構えも印象的だったので、補遺に書き残しておきます。まずはTwitterの運営に関してです。国立天文台のTwitterでは、双方向性の要素を入れるために、毎週金曜日にクイズを出して、回答を収集しているそうです。そして、週明けの月曜日に回答が発表されます。フォロワーを少しでも楽しませたいという想いが感じられます。また、無関心層への情報発信として、(YouTubeなど)新しいメディアを積極的に活用したり、研究成果のプレスリリースではできる限りキャッチーなタイトル付けを心掛けているそうです。こういった意識はぜひ見習いたいと思いました。

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