分野を越えた「ビッグヒストリー」の大学教育における可能性

私たちは歴史を学びます。昔の日本には侍がいたこと、石器で狩りをしていた時代があること、恐竜がいたこと、太陽ができて地球ができたこと、ビッグバンから宇宙が始まったこと。

138億年におよぶ壮大な歴史を自然科学・人文科学を融合した視点で紐解いていく試みが「ビッグヒストリー」です[1]。文献[2]では、

ビッグヒストリーの流れは、人類史と地球の歴史を宇宙創成の物語へと統合する

とも記されています。この試みは、あのビル・ゲイツ氏を感激させ、彼の支援によって知名度をぐんと上げたそうです。

文献[2,3]は、最近出版された日本語の関連書籍です。明石書店のウェブページには文献[3]の詳しい紹介があるので、興味のある方はご覧になってみて下さい。

さて、先述した歴史は言葉や文字によって伝えられ、私たちが享受しています。この営みは「コレクティブ・ラーニング(集団的学習)」と呼ばれ、「コレクティブ・メモリー(集団的記憶)」として蓄積されることで、世代を超えます[3]

歴史を有していることは、私たち人間(ヒト、ホモ・サピエンス)の特徴であることを「ビッグヒストリー」から改めて学ぶことができます。文献[3]の監修を務められた長沼毅先生も、このことに関して、「人類≠人間」であることと併せて強調しています。(※「人類」だとネアンデルタール人なども含まれます。)

例えば、アインシュタイン博士の相対性理論も、数多くの人たちが理解し、検証し、伝承しているからこそ、今日の物理学を支えるに至っています。アインシュタイン博士の業績はもちろん偉大ですが、それが今日でも活かされていることは“コレクティブ”の賜物だと理解できます。

学校で習う一つひとつの事柄の背景には、歴史の積み重ねがあることに気付かされます。そして、人間が“コレクティブ”にも、時代の流れの中で前進していることも学べます。

上述したように、個人的にも感銘を受けたのですが、それに留まらず、この「ビッグヒストリー」は分野を越えた学際的な教育手法としても、注目の価値があると僕は思ってます。実際に、「ビッグヒストリー」を用いた教育を展開している大学もあります。その例には、桜美林大学ビッグ・ヒストリー・プロジェクトが挙げられます。

この「ビッグヒストリー」が今後の大学教育、さらには、科学教育にどのような効果をもたらすのか、とても興味があります。

文献[2]の訳者でもある渡辺政隆先生は

世界史や日本史は、人文系の分野とされている。しかし技術革新や自然環境の影響を抜きに、人類の歴史を語ることはできない。そうなると、この浮世の歴史を語ることは、畢竟するに壮大な学際的試みとなる

と書いています。

「ビッグヒストリー」は理系・文系の“壁”を越える一つの貴重な教材なのです。


【参考文献】
[1] Big History Project:https://www.bighistoryproject.com/home

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