「等身大の科学」に思いを馳せる

今回のブログでは「等身大の科学」について書きます。

この言葉は、科学と社会に関する執筆を精力的に続けておられる宇宙物理学者の池内了先生が、ビックサイエンスへのアンチテーゼとして掲げたものです。

最先端の科学においては、人手や資金が膨大に必要となる例が多くなりました。物理学で言うと、巨大な粒子加速器を用いた実験研究などが挙げられます。また、今年のノーベル物理学賞の対象となった重力波観測研究もその一つに数えられます。このように、施設も、費用も、携わる人数も大規模な科学はビックサイエンスと呼ばれます。ビッグサイエンスには、最先端の現場に身を置く研究者でないと携わることができません。

肉眼では到底見えない対象を巨大な実験装置で探る現代科学は、人々に科学を遠い存在だと思わせてしまうこともあります。

ビックサイエンスに対し、「等身大の科学」が必要だと池内先生は強調します。「等身大の科学」について、池内先生は著書の中で、

サイズとして身の丈の対象を扱うのだが、あまり費用がかからず、誰でもが参加できるという意味でも等身大である科学のこと

と説明しています(文献[1] p189)。「等身大の科学」は記載に基づく博物学が現代では軽視されがちであることへの警鐘にもなっています。

では、「等身大の科学」の典型例とは何でしょうか。例えば、野鳥や昆虫などの生き物観察が挙げられます。生き物の行動を季節ごとに記録し、それを積み重ねる研究です。

新潟県十日町市の越後松之山「森の学校」キョロロでは「等身大の科学」を理念の一つに掲げ、地域(里山)に根ざしたさまざまな観察会が多数行われています。
※池内先生はキョロロの顧問を務めた経歴もお持ちです。
※僕も昨年キョロロを訪問し、初めてゲンゴロウを生で見ることができました!

「等身大の科学」は、気軽に参加でき、自分自身で体験できるので、自分と科学との距離感が近くなる効果もあることでしょう。

僕も田舎で育ち、虫捕りや魚釣りに精を出していた時期があります(今はインドア派です)。自由研究でクモの観察をしたりもしていました。観察して、図鑑をぱらぱらとめくり、、、という営みは僕にとっての「等身大の科学」でした。

あの湯川秀樹博士も幼き頃の虫との関わりをエッセイの中で回顧しています[2]

現代の最先端科学はとても魅力的です。でもそれと併せて、「等身大の科学」にも思いを馳せたいな、と池内先生の本を読みながら考えました。


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